少し前、嬉しいニュースを見かけました。毎年ミラノで開催されている世界最大の家具見本市「ミラノサローネ」。その中でも若手デザイナーの登竜門と言われる「サローネサテリテ」で、日本人が最優秀賞を受賞したというのです。しかもなんと、神戸出身!Kuli-Kuliという屋号で活動する山内真一さんというデザイナーの方です。そしてこれまたタイミングの良いことに、山内さんが登壇するトークイベントがあったので参加してきました。実際の作品も展示してあったので見たり触ったりしてきましたが、形状記憶の性質を持つものや、触ると温度の違いで色が浮き出るものなど、革のイメージが変わるような面白い作品ばかり。まだまだ革の世界は広がるばかりです……。
さてさて、身近な革情報にもアンテナを張れるようになってきた私ですが、今回は「天然皮革」と「合成皮革」の違いについて書いてみることにします。合皮って、おそらくみなさんも聞いたことがあるんじゃないかと思うのですが、なんとなく「人がつくったモノ」感がある響きですよね。ということは、つくられていない「天然」もあるってことです。
天然素材の革は、動物が生命活動を行うために複雑な繊維構造をしていますが、複雑なぶん、さまざまな機能を持っています。その天然素材の見た目や風合いに似せて織物や不織布を加工、その上からナイロン樹脂やポリウレタン樹脂をコーティングしてつくられるのが合成皮革です。天然の革に人の手が「合」わさってできる「革」ということですね。
どんどん向上する技術のおかげで、近年では天然皮革と見間違えるものも多いようですが、やはり質を比べると総合的には天然皮革のほうが優れているようです。また、合成皮革や人工皮革は製造されたその時点でベストコンディション、つまり完成状態の頂点なわけで、乱暴な言い方をしてしまえばあとは質が下がっていくのみ。ある物質に水が加わることで生成物が分解されてしまう“加水分解”と呼ばれる劣化が始まるうえ、皮革はその性質上、ベストコンディション状態に戻るのにはある程度の時間がかかってしまいます。
でも、ものごとは捉えようですね。繊維としての欠点は、「経年変化」として私たち消費者を楽しませてくれる、革ならではの要素のひとつになっているんです。ほら、「この革、年季が入ってシブいね」って、よく言うじゃないですか。そりゃあ年季が入りすぎてくたくたな革もありますが、不思議と「ああ、すごく使い込まれたんだなあ」としみじみしてしまうんですよね。経年変化は、“同じ状態”よりも“変化”を楽しんでいたいという究極のポジティブシンキングの表れなのかもしれません。
そんな革の経年変化も、さすがにほったらかしではモノ自体が本当にダメになってしまいます。というわけで、次回は革のお手入れについて。「あんまりできてないし、ちゃんとしないと……」と、軽い気持ちで調べ始めた私を待っていたのは、衝撃の真実でした。