とうとう30回目を迎えてしまいました。このコラム、こんなに続くとは誰が予想していたでしょうか。おそらく私がいちばんびっくりしています。今回はみなさんもよくご存知かと思われる「時は金なり」ということわざを文字ってタイトルにしましたが、そうなのです。革も時間も同じくらい貴重なもの。本来は「時間を無駄遣いするなよ〜」という戒めの意味ですが、革にとって、時間とは“熟成期間”です。長くお付き合いすればするほど味が出るのが革の魅力。残念ながら私はそういうものを持ち合わせていませんが、子どもの頃からおじいちゃんおばあちゃんになるまで使い込んでいるものがある方も、いらっしゃるのではないでしょうか。私の身近にも、お気に入りの革のカバンをきちんと修理に出しながら使い続けている人がいます。そんな愛着のわく革製品に、私もいつか出逢えるのかな……王子様を待つプリンセスもこんな気持ちなのかしら。いえ、30手前の平々凡々な会社員が吐く言葉じゃありませんね、失礼しました。
しかし、もう1年半も書いてるんだからそろそろ相棒の革アイテムくらい見つけないと!と思っているのは本当です。そのうちご報告できると思いますので、その時はよろしくお願いいたします。なんか、結婚するみたいだな。
さて、革との結婚話は置いておくとして、第30回目にふさわしいテーマはなんだろうと考えておりました。ふさわしいかどうかはわかりませんが、今回はひとつ「ランドセル」のお話を。
ランドセルについては、第13回で少しだけ触れています。伊藤博文が大正天皇の学習院入学祝いに献上したのが最初だったと言われていることから、一般的に流通している現在のランドセルの形状は「学習院型」と呼ばれているのだとか。私もその形のランドセルを使っていました。祖母にプレゼントしてもらったのがもう20年も前になるのかと思うと…恐ろしいですね。今でこそまるで色鉛筆のようにカラーラインナップが充実しているランドセルですが、私が毎日背負って登校していた頃は、友達が使っていた少しピンク色っぽいランドセルですら珍しがられていました。機能面でも、確かちょうどランドセル生活が終わりそうな時分にA4サイズが楽に入るモデルが登場し始めていたと思います。A4のクリアファイルを必死にねじ込んでいたあの努力は一体…と衝撃を受けました。近年では軽量化の研究も重ねられているようで、教科書をたくさん持ち歩かないといけない子どもたちには嬉しい仕様になっているみたいですね。某有名ランドセルメーカーでは、汗をかきやすい肩や背中の部分に吸湿・放湿効果のある合成皮革を用いているようで、いたれりつくせりとはこのことか、とただただ目を丸くしてしまいます。
しかしよく考えてみれば、6年間ほぼ毎日お世話になるカバンが丈夫な革でできているというのは納得のいくことですね。最初は全く型崩れのしていないパリッパリの新品で、逆に自分が背負われているんじゃないかというような出立で登校していましたが、年々馴染み、体にフィットするようになってくるランドセルは、それこそ相棒みたいなものです。部分的にハゲていった表面の赤色ですら、今思えば成長の証だったのだなあとしみじみします。
ランドセルさん、もうお別れしてだいぶ経つけど、本当にありがとうございました。あなたのおかげでこんなに大きくなって、あなたとの思い出をこうやって綴る日までやってきましたよ。
日本の子どもたちは、これからも革と一緒に成長していくのでしょうね。日常に寄り添う革から、今後も目が離せません。