42

春のうららの隅田

桜もすっかり散ってしまって、気づけば目に鮮やかな緑色が街中にあふれるようになりました。私が通勤路に使っている道は植物の管理が行き届いていて、おそらく市の環境整備を担当する方々だと思うのですが割とこまめに季節ごとのお花が植え替えられているのを目にします。四季は日本の魅力なので、それを目で感じさせてもらえるというのは嬉しいものですね。整備担当の方、いつもありがとうございます。かく言う自分は、何かを“お世話する”ということが壊滅的に下手くそというか向いていないので、小学生の時に家でミニトマトを育てた思い出くらいしかありません。加えてトマト嫌いなので、収穫したミニトマトは確かすべて家族にプレゼント(ものは言いよう)した気が……あれ、何の話でしたっけ。

そうそう、植物の話でした。実は最近、1年ほど前に見つけた面白いニュースを思い出したんです。

サボテンから革を作ることができる

「どういうこと?」とお思いの方が多いのではないでしょうか。おいおい何を言ってるんだ、革は動物の皮から生まれるものだろう、と私も最初は理解が追いついていませんでした。結局その時はあまり深掘りせず、ただ面白そうな話題を見つけただけで終わってしまったのですが、今になってふと思い出し調べてみたら「ヴィーガンレザー」なるもの存在を知りました。

ヴィーガンレザー、それすなわち天然由来の素材から作られた革です。ヴィーガンという言葉自体は肉や魚をはじめとする動物性食品を食べない人を指すときに使われるので、聞いたことがあるという方もいるかもしれません。これまでこのコラムで紹介してきたのは動物の皮を加工してできる革でしたが、ヴィーガンレザーは植物など動物以外の素材で作るもの。日本ではまだそこまで普及していないようですが、サスティナビリティ(持続可能性)という言葉が飛び交うようになってきた近年、エコ素材としても注目されているようです。

ここでサボテンの話に戻りますが、そんなヴィーガンレザーの一種として、サボテンを素材とした本革に近い風合いの革が開発されたというニュースを見かけたのが1年前。開発したのは2人組のメキシコ人で、サボテンは栽培に水を使わず、質感も動物の皮に近いという着眼点から生まれたのだとか。今ではそのサボテンレザーを使った革製品ブランドを立ち上げた日本人まで現れたようで、気がつかないうちに革業界でもいろいろなことが起こっていて驚きました。革製品をつくる人、新しい素材を生み出す人、革を使って新たなビジネスを始める人…革に興味関心を持って実行に移している人がこんなにもいるなんて、このコラムを始めるまでは知りもしませんでした。恐るべし、広くて深い革の世界。

さて、そんなこんなで続いてきた「革いいね!コラム」ですが、なんと次回が最終回です。広く深い革の世界まだまだ深掘りの余地がありますが、この先はコラムを読んでくださっているみなさん自身が、ふとした革への疑問を深掘りする番なのかもしれません。
ここでシメの言葉を羅列すると次回書くことがなくなってしまうので、このへんで。
それでは、第43回でお会いしましょう。

メキシコで開発されたサボテンレザー「DESSERTO」のwebページはこちら

Ranking

1_

この皮をなめしてな、
にしようと思うたのじゃ

vol.002

2_

出逢いは
億千万の皮騒ぎ

vol.004

3_

サウイフ
ワタシハナリタイ

vol.003

4_

見つめ合う視線の
レザー・ビーム

vol.005

5_

、お前だったのか。
いつもスマホを守ってくれていたのは。

vol.001