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皮は流れて
どこどこ行くの

最近焼き鳥屋に行っていないなあ。というか、居酒屋っぽいところに足を運んでいないなあ。いま、そんなことを考えながらキーボードを叩いています。いきなりオヤジくさくてすみません。第1回の挿絵にこっそり焼き鳥の皮が好きなんですというメッセージを忍ばせたのですが、何でしょうね。何であんなに美味しいんでしょうね、皮って。

今でこそ、このコラムで紹介してきたように加工されて様々なアイテムとして使われている革。しかし地球の歴史を遡ってみると、人類にとって皮はもともと貴重な食料のひとつでした。日常生活に溶け込む“食”の一場面でしかなかったわけです。皮に触れ続けるうちに、我々の祖先は皮が持つほかにはない特性に気がつきます。生の肉と違い放置しても腐らないこと、乾燥してしまっても軽く揉めば柔らかくなり曲げやすいこと…彼らは、「食」としてではない皮の魅力にとりつかれました。そして、皮を革へと変える方法……今で言う「なめし」手法を発見したのです。

そして人類はこの「なめし」革を着用し、風・砂・暑さ・寒さ・雨などの自然脅威から身を守る“衣”を手に入れ、洞窟や密林から移動できる“住”をつくり、徐々に地球上を征服していくこととなります。人が集まれば集まるほど“住”が拡大し、やがて街が生まれました。そこでは人だけでなくモノやお金が行き交い、皮から生まれた革も最初の工業製品として取り引きされます。人の手にわたり、どんどん消費されていく革を製造するためのマニュファクチュアができ、それにあわせるように経済や科学、技術が発展。こうして、地球上のさまざまな地域でそれぞれの文化が育まれていったのです。

私たちが生きる現代に至るまでの歴史の中で、革もまた発展に貢献していたと思うと……正直なんだか壮大すぎてうまくイメージできません。しかし、食べていたものを身につけることに使うという発想には驚きです。この観察眼がなかったら、私たちは今でも焼き鳥屋さんで皮(タレ)を注文して美味しい美味しいと頬張っているだけだったかもしれないんですよ。そもそも、今とまったく同じ生活形態かどうかも怪しいですね。先人の知恵に感謝です。

ようやく革の歴史に触れることができました。そう、歴史好きなので、嬉しいんです。ところで、皮を身にまとうのは良いんですが、やはり最初は風雨をしのいだりする機能性重視な使い方だったわけで……いわゆるオシャレの概念はいったいいつから生まれたんでしょうか。ホモ・サピエンスが「今年のトレンドはこれ」とか言ってレザージャケットを着こなしてたら、それはそれで面白いんですがね。

次回は、世界で最初の革ファッションについてお話ししようと思います。

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