わたくし、兵庫県民になってかれこれ3年が経ちました。なんか、微妙にまわりくどい言い方なのでもう神戸市民と言ってしまいますね。神戸での生活の4年目がスタートしています。人生で初めての一人暮らしということでドキドキだった記憶もすでに懐かしく、すっかり慣れてしまいました。といっても基本はインドア人間、「2日ある休日の片方は家に籠もってないと嫌だ!」という謎のポリシーを掲げているせいで、神戸歴も長くなってきたというのに一向に神戸の知識が増えません。もっと外に出なさい…心のオカンが叱ります。
そんな引きこもり筆者ですが、こちらのコラムを書かせていただいているおかげで兵庫県の「革」情報にはなんとなくアンテナを張って、地味に詳しくなりつつあります(念のためお伝えしますが媚を売っているわけではありません、決して。いつもありがとうございます)。だいぶ前に、ミラノサローネで賞をとった神戸レザーの商品の話題を出しましたが、あれ以来「神戸レザー」という単語には敏感になっています。でもあまりその経緯だったり、詳細には触れたことがなかったので、ちょうど良い機会に調べてみました。
神戸レザー、ブランド名としては「KOBE LEATHER」は、神戸ビーフとして食べられている牛の皮の部分を再利用しようと、様々な製品を生み出している2019年から始まったプロジェクトです。国内外で味われている神戸ビーフですが、その皮はこれまでほかの種類の牛の皮と区別されずに活用されてきたのだそうです。肉に箔がついても、革製品としては特に取り上げられることがなかったんですね。そのような経緯もあり、「あの“神戸ビーフの革”と謳うことができれば新しい価値が生まれるのではないか…」という期待を込め、前述のミラノサローネに出展したところ作品が世界の目に留まり、見事若手デザイナー部門の最優秀賞を受賞。神戸レザー協同組合が発足し、皮革の開発や製品PRなどを進める活動が本格化したのです。
現在神戸レザーとして認定されている製品としては、受賞した際に革の魅力を伝える切り口となった「形状記憶」機能を活かし、ペン立てや花瓶として使えるようになっている小型の置き型ホルダーや、同じく形を保つ特性を活かして生まれた革製の折り紙、また、型押しによって生まれる凹凸の陰影が印象的なデザインの財布などバラエティに富んでいます。最近では、神戸開港150年を記念して生まれた土地や特産品をイメージしたカラーの「神戸タータン」とコラボしたランドセルも発表されたというニュースも目にしました(こちら、受注期間はすでに終了しているようです)。ますます広がりを見せているんですねぇ。神戸レザーは取り組みがもっと加速していきそうです。
昔からあるものだったり、今まであまり注目されていなかったものに新しい目線で手を加える…というのは、一応デザインを勉強していた時代があるので学生のときに散々学んできました。長く残すために、余すところなく魅力を伝えるために、みんないろいろな分野で試行錯誤を重ねているんですね。革本来の風合いはもちろんですが、形状記憶やデザインの施し方による見た目の面白さなど、機能面や意匠面での魅力がきっとこれからの神戸レザーの価値をグッと底上げしてくれるんじゃないかと思っています。
なんだか偉そうになってしまいましたが…革の未来に幸あれ!