kakeru kawaru
KAKERU KAWARUとは、革製品のデザイナーや革を扱うアーティストにおもしろい革を選び、その革に感性や技術をこめて世界に1つしかないものをつくり、次の時代にものを残す企画です。

#5 選ぶ人とつくる人

「ジュコさんのKAKERU KAWARU」第5回目は、選ぶ人とつくる人。吉比産業の岩本がデザイナーのジュコさんに料理してもらう革を提案します。KAKERU KAWARUで大切にしていることは、ものを残すということ。ものを残せば、つくり手の技術や感性、想いも残るということを強く信じています。ただ、もしかすると、無茶振り企画なので、かたちにならないかもしれません。何をつくるのか、何をもって完成なのか、3種類の革を全て使うのか、1種類のみ使って表現するのか、それはジュコさん次第。岩本が1つひとつ革の説明をしながら、ジュコさんはつくるもののイメージを浮き上がらせるため、さまざまな質問を投げました。今回は、その一部のやり取りを。
  • 岩本「(KAKERU KAWARUの企画と革の特性を説明後)なんか、もらい事故みたいな感じでごめんねー。」
  • ジュコ(以下、敬称略)「いえ、あの、できる範囲で。笑。でも、こういう面白いことはぜひやりたいです。ちなみに、量産は考えなくていいんですよね?」
  • 岩本「全然考えなくていいよ。そのものを売って稼ぐというのも考えなくていいし、万人受けも考えなくていいです。もう好き勝手にやってもらえればと。ジュコちゃんならどう料理するのかなって。」
  • ジュコ「(ネオプレーンを見て)これは、すごいですね。すごいんですが、むずいなぁ。これ中に入っている革は何ですか?」
  • 岩本「たぶん、シープ。今回つくるものは、作品でいいんですよ。仕上がりがいつっていうのも特に決まっていないです。展示会の時に、よくうち(吉比産業)のバッグを作ってくれるじゃん。あの振り方のような感じで。ジュコちゃんの感性や感覚におかませということで。」
  • ジュコ「新規で型紙をつくるという選択肢もありますかね?」
  • 岩本「全然いいですよ。逆にやったものを、自分の仕事に活かして欲しいし。」
  • ジュコ「了解です!ちょっと考えてみますね。」
  • 岩本「ふだん、ものをつくる時って、何から考えるってのはあるの?」
  • ジュコ「基本的には素材ありきで考えますね。今回の素材も、他の色と組み合わせて・・・ブーツにしても面白いかなと。あと、あれですね、制約が欲しいですね。自由を与えられるのは、けっこう苦手でして。」
  • 岩本「逆にそうなの?」
  • ジュコ「ふだんの靴づくりも、基本的に継続して使っているデザインをベースにしていたり。基本的には新しい企画を考える時でも、制約のある中からつくっていきますね。」
  • 岩本「自由だとどっちに進んで良いか分からなくなっちゃうんだ。俺、制約あるとか絶対ダメだ。じゃあね、靴。靴をつくろう。」
  • ジュコ「オッケーです!」
  • ジュコ「実は靴って、できないことがいっぱいあるんですよね。なので、毎回新しいものを1からつくるというよりは、ベースとなっている型を活かして、素材の組み合わせでどう料理するかを重視しています。」
  • 岩本「その組み合わせって経験から出てくるもの?」
  • ジュコ「どうなんですかね。自分がいいなぁって思うかどうかが、一番大切ですかね。」
  • 岩本「ピタってくるものがあるかどうか?」
  • ジュコ「これが、けっこう(ピタってくるものが)こないもので。革のカット見本を並べたり、にらめっこしながら、ピタってくるまでひたすら手を動かしますね。頭の中で描いても、実際にやってみると良くないことの方が多くて。」
  • 岩本「絞り出している感じ?」
  • ジュコ「絞り出してますねー、ほんとうに。自分の中で心からいいと思ったバランスでつくったものではないと売れないですね。お客さまはすごく敏感なので、いいバランスだなって思ったものにはとても反応が良かったりします。自分がしっくりこなかったものだと、やっぱり反応が悪かったりするので。やっぱり、自分が心から良いなと思うバランスでつくらないと。」
  • 岩本「買ってくれる人の方が分かるってことですね。だからね、今回どう料理してくれるのか楽しみなの。」
  • ジュコ「では、また目処がつきましたらご連絡しますね。」
  • 岩本「よろしくお願いします!」
いよいよ選んだ革をジュコさんにお渡ししました。はてさて、どのようなものが生まれるのでしょうか。次回は、制作途中段階のあれやこれを少しだけではありますがお届けします。